日本でもiPhoneが発売されるというニュースが流れて、多少なりとも業界には話題となっている訳だが、Web業界に携わっているとiPhone用のコンテンツがどれだけ流通するのかが興味の的だし、いち早くiPhoneに対応させることによって、ビジネスチャンスがあるかも知れないという気持ちもある。
しかし、Appleもこのビジネスモデルを野放しにする訳もなく、ネイティブなアプリケーション配布はてめぇで仕切ってやろうというイヤらしい体質が見え隠れする。きょうびの開発は開発者を囲う事が第一なので、昔と違ってSDKは無料で手に入るが、好き勝手に配布できないのは痛い。
そこでAppleに縛り付けられない方法として、iPhone向けのWebアプリケーション開発に注目が集まっている。もちろんiPhoneが爆発的に普及する保証は全くないから空振りに終わる事もあるだろうが、Webコンテンツの開発ならまだ流用ができるという類だろう。そんな辺りの話を@ITで記事にしているので、興味のある人は読んでみると参考になるだろう。
記事を読んでいて思い出したというか、なんか読んだ事のある内容だなと思ったのだが、それはまだ私が68KなMacを使っていた頃、Inside Macintoshという開発者向けの高価な本を数冊買って必死にMacintoshのプログラミングを覚えようとした際に、UIの重要さをくどい程解説したものを読んだからだ。
Appleというメーカーの最も価値ある部分は、ユーザーが使いやすいと感じるインターフェースをとにかく根本的に分析し、それを共通意識として持たせようという取り組みがなされていたところにある。結局私は未だにプログラミングが出来ないので深い部分は理解出来ていないのだが、どんなに優れたプログラムでもUIがだめならユーザーは使いづらいと感じるという部分を徹底的に記していた。
Inside Macintoshは10冊近くあったと記憶しているが(一冊が平均1万円位した)、UIの部分の解説にかなりページ数を割いていたし、そのために開発が難しくなろうとも徹底する部分が魅力だった。故に一ユーザーにすぎなかった私も当時はマイナー過ぎて変人扱いされるMacintoshを愛用し続けた。1ボタンのマウスでも初心者にも使いやすく、上級者にも使えるという開発者の創意工夫が随所に盛り込まれていたのだ。
時代は流れてiPhoneというタッチパネルを操作する特殊な携帯端末が世に広まろうとしている訳だが、Appleはやはり重要な部分を忘れてはいない様だ。シンプルなUIこそがユーザーの苦手意識を緩和し使いやすいと感じさせる。その為には開発者が苦労しなくてはならないがそれは当然の事だと言う仕組み。相変わらずユーザーに優しく開発者に厳しい姿勢だ。
しかし、時代はすっかり流れて事情は変わっている。私が大枚をはたいてInside Macintoshを買って、C言語での開発環境も買って取り組んだにもかかわらず、結局プログラミングに苦手意識を持ってしまい未だに開発者としてはド素人のままだという様な事は断じて通用しない。もちろんわたくしに適正がなかったのは言うまでもないが、これだけ便利になった時代にお金がかかり、時間がかかり、手間がかかりと言う状態では開発者はそっぽ向いてしまうだろう。
SDKは開発の手助けをしてくれる便利なツールだが、Appleは積極的に開発ツールを改良しリリースしなければ、iPhone用に最適化されたコンテンツを作ろうとする人は増えないだろう。一時的に興味を持ってふれてみる人はいたとしても、デメリットが多いと察知すれば離れていくものだ。昔はプログラムはユーザーが作らせてもらうものだったが、今の時代は作っていただくものに変わっていると言ってもよいだろう。 立場が逆転しているのだ。ソフトウェアがなければただのがらくたに過ぎないからだ。
それでもこの波にいち早く乗ろうというチャレンジ精神旺盛な開発者は多いと思う。特にWeb業界は飽食気味であるからこそ新たな技術や方法に興味を持つ人が増えていると思う。おそらくネイティブなiPhoneアプリよりもiPhone向けのwebコンテンツの方が普及するといって間違いないだろう。それだけWeb業界には人が多い。
もしかすると過去のトラウマ的なプログラミングに対する苦手意識を持つ私も、webコンテンツ作成なら追従出来るかも知れない。もっとも重要なのはiPhoneのUIを理解し、ユーザーの利便性を考慮した構造を実現出来る様に意識し続ける事だからだ。モノクロ時代からMacを愛用していた私にはそれが何となく分かる気がするし過去の経験は強みだと思う。たぶん今の時代にPCを覚えた人には、当時のMacがどれだけ優れたUIを目指し実現していたかは理解出来ないと思う。
しかし皮肉な事に、私は学生時代にモールス信号受信で鍛えたブラインドタッチを活かせるキーボードが一番扱いやすいと今は思っている。UNIX系OSのコマンド入力が快適なのだ。なにしろリソースを食わないからコマンドを覚えればいくらでも応用が利く。つくづく時代に逆行していると自分でも自覚しているのだが、またしても波に乗れないとしたら運のない男だなぁと自分を情けなく思う。いや自らの運命を呪うべきかも知れない。


コメント